准教授 高橋 大介 Takahashi, Daisuke 理工学部 応用化学科 #グリコシル化反応#糖質化学#配糖体天然物#ケミカルバイオロジー#有機合成化学 ORCID 0000-0003-3222-6648 慶應義塾研究者データベース(K-RIS) 研究者詳細 - 高橋 大介 研究室URL https://www.applc.keio.ac.jp/~toshima/takahashi.html
研究者紹介 私たちは、有機化学を柱とした精密合成と生物学を柱とした機能解析を用いて、標的とした機能性分子を化学合成し、その機能を理解・活用する研究に取り組んでいます。具体的には、①有用糖質を環境にやさしくかつ効率的に合成する新反応の開発、②医薬品のリード化合物や化粧品素材などの高機能性マテリアルを創製する研究、③合成した有用分子プローブを用いて、これまで未解明であった生命現象や糖質の機能を解き明かすケミカルバイオロジー研究に取り組んでいます。 研究業績紹介 ■選択的な糖修飾法を用いて肺非結核性抗酸菌症の治療薬候補を開発 -薬剤耐性菌に有効となる新規抗菌薬開発に期待- ・要旨:マクロライド系抗生物質アジスロマイシン(AZM)に対する新規化学修飾法の開発を行い、本手法を駆使することで肺非結核性抗酸菌(NTM)症に対する新規リード化合物の創出に成功した。 - 参考文献:Creation of a macrolide antibiotic against non-tuberculous Mycobacterium using late-stage boron-mediated aglycon delivery, Yuka Isozaki, Takumi Makikawa, Kosuke Kimura, Daiki Nishihara, Maho Fujino, Yoshikazu Tanaka, Chigusa Hayashi, Yoshimasa Ishizaki, Masayuki Igarashi, Takeshi Yokoyama, Kazunobu Toshima and Daisuke Takahashi, Science Advances, 2025, 11, eadt2352. ■新型コロナウイルスの感染を抑制する糖質を開発-COVID-19の重症化を抑える治療薬開発に期待- ・要旨:海藻のぬめり成分などに含まれるフコイダンの基本構造となる硫酸化四糖の類縁体(糖質)を化学合成し、COVID-19 の重症度に関与する酵素ヘパラナーゼの阻害活性と新型コロナウイルス(以下、SARS-CoV-2)の感染阻害活性を評価した。その結果、本類縁体が、ヘパラナーゼ阻害活性と SARS-CoV-2感染阻害活性の両方の機能を併せ持つことを明らかにし、COVID-19の重症化を抑える治療薬のリード化合物として有望であることを見出した。 - 参考文献: Synthesis of Low-Molecular-Weight Fucoidan Analogue and Its Inhibitory Activities against Heparanase and SARS-CoV-2 Infection, Aoi Sugimoto, Tatsuki Koike, Yuya Kuboki, Sumika Komaba, Shuhei Kosono, Maniyamma Aswathy, Itsuki Anzai, Tokiko Watanabe, Kazunobu Toshima and Daisuke Takahashi, Angewandte Chemie International Edition, 2025, 64, e202411760. ■糖質β-アラビノフラノシドを精密に合成する新手法の開発-配糖化を簡便に、抗アレルギー剤開発に期待- ・要旨: 単糖が鎖状に連結した分子である「糖鎖」の中でも、五員環糖の一つである β-アラビノフラノシドに着目し、芳香族ボロン酸を用いることで、完全な立体選択性および高い位置選択性で、効率的な配糖化が行える有機化学的新手法の開発に成功した。本手法を用いることで、新たな抗アレルギー剤の開発が期待されます。 - 参考文献: Regioselective and Stereospecific β-Arabinofuranosylation by Boron-Mediated Aglycon Delivery Kazuki Inaba, Yuna Naito, Mina Tachibana, Kazunobu Toshima and Daisuke Takahashi, Angewandte Chemie International Edition, 2023, 62, e202307015. ■鳥類病原性大腸菌の抗原候補糖鎖を特定-化学合成を駆使したワクチン開発に期待- ・要旨: 独自に開発してきた糖鎖合成反応を駆使することにより、病原性大腸菌 O1 に含まれる特異な糖鎖構造の化学合成に初めて成功した。さらに、その糖鎖構造が、鳥類病原性大腸菌O1に対するワクチン開発に有望な抗原候補糖鎖であることを明らかにした。 - 文献: Synthesis of a pentasaccharide repeating unit of lipopolysaccharide derived from virulent E. coli O1 and identification of a glycotope candidate of avian pathogenic E. coli O1, Nobuya Nishi, Katsunori Seki, Daisuke Takahashi and Kazunobu Toshima, Angewandte Chemie International Edition, 2021, 60, 1789-1796. ■等価な水酸基を見分けて選択的に糖を付与する新技術 -抗生物質の合成を簡便に、創薬研究に貢献- ・要旨:メソジオールが有する等価な2つの水酸基を識別し、一方の水酸基に対してジアステレオ選択的に糖を付与する新たな触媒的グリコシル化反応の開発に成功した。本技術は、新規抗生物質の開発をはじめとし、創薬・医学・生物学分野に広く貢献することが期待される。 - 参考文献: Diastereoselective desymmetric 1,2-cis-glycosylation of meso-diols via chirality transfer from a glycosyl donor, Masamichi Tanaka, Koji Sato, Ryoki Yoshida, Nobuya Nishi, Rikuto Oyamada, Kazuki Inaba, Daisuke Takahashi and Kazunobu Toshima, Nature Communications, 2020, 11, 2431. 研究の応用領域 ・分子生命化学 ・糖質科学、糖質化学 ・ケミカルバイオロジー ・有機合成化学 社会的意義 ・次世代型創薬モダリティの創出 ・糖質医薬品の開発 ・コスメシューティカル素材の開発 ・生命現象の解明