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牛場 潤一
教授
牛場 潤一

Ushiba, Junichi

理工学部 生命情報学科

Researchmap会員ID
B000003280
慶應義塾研究者データベース(K-RIS)
研究者詳細 - 牛場 潤一

研究者紹介

ヒトは感覚と運動をいかにして統合し、精緻な動作を発現しているのか?ヒト固有の身体運動能力を獲得する過程で、脳はどのように身体性を心に宿したのか?神経システムの持つ様々な謎に魅せられ、神経科学的手法に立脚した研究を進めている。研究成果を医療や芸術へ展開する学術再編纂行為にも関心をもって取り組んでいる。

研究業績紹介

■ブレイン・マシン・インターフェース(BCI)の医療応用
・脳とAIをつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Computer Interface: BCI)」技術を応用して、脳卒中後の手指まひの機能回復を誘導する研究をしています。BCIを使って自分の脳内活動を「見える化」すると、治療ターゲットとした脳領域(体性感覚運動野)の活動を自己調節しやすくなり、治療抵抗性の高い手指まひの回復を引き出すことができます。この論文は国際調査チームを組成して、世界で行われた複数の臨床試験の結果を医療統計学的に分析したものです。
- タイトル: Cervera MA, Soekadar SR, Ushiba J, Millán JDR, Liu M, Birbaumer N, Garipelli G. Brain-computer interfaces for post-stroke motor rehabilitation: a meta-analysis. Ann Clin Transl Neurol. 2018 Mar 25;5(5):651-663. doi:10.1002/acn3.544.

■ブレイン・マシン・インターフェース(BCI)と可塑性誘導
・脳とAIをつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Computer Interface: BCI)」技術を応用して、治療ターゲットとした脳領域(体性感覚運動野)の活動を自己調節訓練することで、ターゲットとした脳領域の機能結合が即時的に強化されることを明らかにしました。脳卒中片麻痺患者さんを対象とした、機能的脳イメージング(functional MRI:fMRI)による臨床研究です。
- タイトル: Tsuchimoto S, Shindo K, Hotta F, Hanakawa T, Liu M, Ushiba J. Sensorimotor Connectivity after Motor Exercise with Neurofeedback in Post-Stroke Patients with Hemiplegia. Neuroscience. 2019 Sep 15;416:109-125. doi:10.1016/j.neuroscience.2019.07.037.

・脳とAIをつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Computer Interface: BCI)」技術を応用して、訓練ターゲットとした脳領域(体性感覚運動野)の活動を自己調節訓練することで、ターゲットとした脳領域の皮質構造や線維束構造が即時的に変化することを明らかにしました。健常成人を対象とした、構造的脳イメージング(structural MRI)による基礎研究です。
- タイトル: Kodama M, Iwama S, Morishige M, Ushiba J. Thirty-minute motor imagery exercise aided by EEG sensorimotor rhythm neurofeedback enhances morphing of sensorimotor cortices: a double-blind sham-controlled study. Cereb Cortex. 2023 May 24;33(11):6573-6584.

・安静時の脳状態は時々刻々と変化し、揺らいでいます。これは被験者自身が自覚できない生理学的な現象です。こうした「揺らぎ」の状態を頭皮脳波から同定し、特定の脳状態に至ったタイミングで音を鳴らしてキーボード操作を開始させると、指のもつれにくさが低減することを明らかにしました。脳とAIをつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Computer Interface: BCI)」技術を応用すると、私たちの脳が持っている基本的な性質を解き明かすことができる、という事例です。
- タイトル: Iwama S, Yanagisawa T, Hirose R, Ushiba J. Beta rhythmicity in human motor cortex reflects neural population coupling that modulates subsequent finger coordination stability. Commun Biol. 2022 Dec 15;5(1):1375. doi:10.1038/s42003-022-04326-4.

・脳とAIをつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Computer Interface: BCI)」技術を応用して、訓練ターゲットとした脳領域(体性感覚運動野)の活動を自己調節訓練することで、体性感覚野の興奮性が高くなることを明らかにしました。健常成人を対象として、体性感覚誘発電位とよばれる電気生理学的検査法を用いた基礎研究です。指の巧緻性運動のパフォーマンスも随伴して向上しているところもポイントです。
- タイトル: Iwama S, Ueno T, Fujimaki T, Ushiba J. Enhanced human sensorimotor integration via self-modulation of the somatosensory activity. iScience. 2025 Mar 3;28(4):112145. doi: 10.1016/j.isci.2025.112145.

・脳とAIをつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Computer Interface: BCI)」技術を応用すると、右半球の体性感覚運動野と左半球の体性感覚運動野をそれぞれ異なる興奮レベルに自己調節することが可能であることを示した基礎研究です。手術を要しないウェアラブル式の脳波計測であっても、標的脳領域の状態をこれほど自由度高く調節可能だったことは驚きでした。
Hayashi M, Mizuguchi N, Tsuchimoto S, Ushiba J. Neurofeedback of scalp bi-hemispheric EEG sensorimotor rhythm guides hemispheric activation of sensorimotor cortex in the targeted hemisphere. Neuroimage. 2020 Dec;223:117298. doi: 10.1016/j.neuroimage.2020.117298.

・脳とAIをつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Computer Interface: BCI)」技術を応用して左右の体性感覚運動野活動を自己調節すると、脳梁間抑制性結合が変調することを明らかにした基礎研究です。
Hayashi M, Okuyama K, Mizuguchi N, Hirose R, Okamoto T, Kawakami M, Ushiba J. Spatially bivariate EEG-neurofeedback can manipulate interhemispheric inhibition. Elife. 2022 Jul 7;11:e76411. doi: 10.7554/eLife.76411.

■脳内ネットワークの隠された機能をAIで探る
・片手でできるさまざまな運動タイプを選択し、実行しているときに頭部全体から脳波を多点計測してAI分析すると、運動している手と「同じ側」の体性感覚運動野が運動タイプの選択に貢献していることが明らかになりました。「片手の運動は、反対側の脳が支配している」という古典的な考え方を拡張する、新しい発見です。
- タイトル: Iwama S, Tsuchimoto S, Hayashi M, Mizuguchi N, Ushiba J. Scalp electroencephalograms over ipsilateral sensorimotor cortex reflect contraction patterns of unilateral finger muscles. Neuroimage. 2020 Nov 15;222:117249. doi:10.1016/j.neuroimage.2020.117249.

■AIを活用した脳情報の高感度な読み出し技術の開発
・短時間の安静時EEGデータから個人のアルファ周波数(IAF)を迅速に特定するための逐次ベイズ推定アルゴリズムの開発と評価を実施しました。これにより、脳情報の高感度な読み出しを可能にしました。30秒もかからずに脳波特徴の個人差を特定できるため、実用性が高いのが特長です。
- タイトル: Iwama S, Ushiba J. Rapid-IAF: Rapid Identification of Individual Alpha
Frequency in EEG Data Using Sequential Bayesian Estimation. IEEE Trans Neural
Syst Rehabil Eng. 2024;32:915-922. doi: 10.1109/TNSRE.2024.3365197.

研究の応用領域

・ブレイン・マシン・インターフェース、ブレイン・コンピュータ・インターフェース
・神経可塑性と運動学習
・神経リハビリテーション

社会的意義

・神経医療の創出
・神経科学の発展
・スタートアップを通じた社会実装
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