研究者紹介
- どんな人も老化して、心身の機能が低下するわけですから、バリアフリーの問題は、人間全般にかかわる大きな問題であると言えます。私の研究活動の目的は、21世紀社会において、者・高齢者を含むすべての国民・ユーザが安心して、安全で快適な生活を送ることができるように、先端的科学技術を有効に応用していく方法を探り、未来の総合的バリアフリー社会空の構築を目指すことにあります。私は「障害のある人や高齢者にとって最も重要なのは、生活上の機能を充足させることである」という観点から研究・実践を進めています。近年、バリアフーやユニバーサルデザインが注目されていますが、ユーザである障害者・高齢者の生活の視点は十分でなく、ニーズとシーズの乖離が見られる場合もあります。これらの乖離を解消するためには、(1)多様な障害当事者のニーズを把握し、(2)抽出したニーズを研究者・開発者に伝え、(3)開発されたシーズに適合するニーズを持つユーザ(障害当事者)に情報提供・調整る必要があり、それぞれの役割を担う人材養成が急務です。加えて、(4)開発されたシーズが安定供給されるためには、「特殊な境遇の人のための特殊な技術」ではなく、「高齢化社会においては遅かれ早かれ誰にでも必要となる技術」という観点で産業化を図る必要があります。以上のようなバリアフリー・ユニバーサルデザインを推進していくために必要な科学的なエビデンスを蓄積し、どんな心身の状態の人でも生き甲斐を持ち、安心して生活できる社会を目指していきたいと考えています。
研究業績紹介
- ■読書バリアフリーの推進に関する実践的研究
・研究目的: プリントディスアビリティのある人達の読書バリアフリーを実現するための基礎データを収集すること
- タイトル: Actual situation of digital textbooks for students with low vision in Japan, NAKANO Yasushi (International Conference on Low Vision Program and Proceedings), 45-103 2019年
■フォントの視認性に関する基礎研究
研究目的: 障害者や高齢者にも視認しやすいフォントの条件を明らかにすること
- タイトル: Development of a Readable Hangul Font for People with Low Vision: Evaluation of Hangul Fonts Readability with the Use of Paired Comparison Scaling, NAKANO Yasushi, HAN SungMIn, & MORISAWA Takeshi. (ISEP2017 International Symposium on Education and Psychology-fall Session) , 104-113 2017年
■視覚障害者の試験における合理的配慮に関する研究
研究目的: 視覚障害者が試験を受ける際の合理的配慮の根拠を明らかにすること
- タイトル:Practical study on test accommodations for students with visual impairments based on scientific evidence, NAKANO Yasushi (Impact) , 8, 29-31 2020年
研究の応用領域
- ・障害の社会モデルと共感的コミュニケーションに焦点を当てたバリアフリー教育プログラムの開発。
・視覚障害者の就労支援と職場環境の整備。
・障害理解教育とインクルーシブ社会の実現。
・障害者の生活環境と福祉のまちづくり。
社会的意義
- ・視覚障害者が試験の本質を損なわずに公平に受験できるよう、心理学的知見に基づく合理的配慮を提案し、教育評価の公正性を高めています。
・教科書や教材のバリアフリー化を通じて、視覚障害児の学習環境を整備し、インクルーシブ教育の実現に貢献しています。
・ICTを活用した支援ツールの開発により、通常学級で学ぶ視覚障害児の学習参加と社会的包摂を促進しています。