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研究者紹介

大木聖子氏は、災害科学のコミュニケーション,地震学,防災教育の研究者です。学校をはじめとした公益施設や組織の防災教育教材の開発や地域への防災行動の展開などに関する取り組みを行っています。

研究業績紹介

■ 防災教育および防災研修教材の開発
不確実性を伴うリスクの伝え方として「防災小説」というナラティヴ・アプローチを開発.被災した自分が生き抜く物語である「防災小説」は生徒個々人の発災時のシミュレーションとなり,より良い防災行動を考える姿勢を醸成した.被災してなお強く生き抜く自分自身を綴ったことで,かけがえのない「今」を仲間と共に生きていることを生徒らがあらためて認識し,日常への向き合い方がより主体的となった.
また,教員が自ら自校の課題と解決策を見つけ出す「リアル防災訓練」を開発.「発災→机の下→校庭集合」にかかる時間を測定するだけの形骸化した避難訓練に,本来であれば高確率で発生する「余震・停電・傷病者」をナラティヴあるいは演技で導入することで,教員が災害時の自校の弱点や強みを考えるようになり,今年度の構成員だとどうか,発災時刻が違ったらどうか,といった主体的な状況付与ができるようになった.
■ 災害科学のコミュニケーション
地震や大雨といった自然現象を社会構成主義的に伝える授業を実施している.既存の理科教育では,地球システム全体の活動の一部である地震や降雨を部分的に切り取って論理実証的な客観性でもって説明している.そのような伝え方ではなく,地球全体の働きをその現象と自分との関わりを問いかけながらナラティヴで伝え,児童生徒が自ら意味生成できるような授業を実施した.すると,児童生徒の大多数が,自然現象が起きるのは地球全体のシステムであり人間には止められないこと,地球に間借りしている自分の方が備えよう,避難しよう,とポジティブに向き合うことができるようになることがわかった.

研究の応用領域

・学校における防災教育と教職員向け研修の開発
・災害科学コミュニケーション

社会的意義

その土地の恵みを受けて暮らしている人々だからこそ語ることのできるナラティヴを引き出し,災害を自分のこと化するツールを提供.これらの人々から紡ぎ出された言葉の豊かさは,災害科学の不確実性や被害想定の多様性を補う効果も併せ持つ.総じて,災害に関して「専門家にしか語れない」「専門家がなんとかしてくれる」と捉えられてきたために失われていた主体性を,人々に取り戻すことに寄与している.

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