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研究者紹介

広大な太平洋の海原に囲われた小さな島の浜辺に佇むと、世界から隔絶された感があるが、海は障壁ではない。陸を棲家とする生物は、生命ある限り海で途中下車できない。すべからく島を目指す。だからこそ島は、人間を含めた生物とモノとコトが出会い、せめぎ合い、凝集する場となる。そうした歴史を島の視点から履歴として描き出す「アイランドスケープ・ヒストリー」の研究を、オセアニアの島々で実践してきた。現在は、サンゴ礁の上に形成された小さな環礁プカプカ(北部クック諸島)で、考古学と地球科学や文化人類学が協働する学際的調査を進めている。我々の関心は温暖化による海面上昇や気象災害にも広がってきている。小さな環礁の研究だが、景観史の射程は果てしない。

研究業績紹介

■景観史研究(ジオ考古学)
・研究目的: 北部クック諸島プカプカ環礁の景観史
- タイトル: Multi-disciplinary studies of 'islandscape' as a meshwork (座長), Anthropology and Geography: Dialogues Past, Present and Future, The Royal Anthropological Institute of Great Britain and Ireland, 2020年9月16日
- タイトル: 出ユーラシア・プロジェクト第5集(分担執筆), 岡山大学文明動態研究所, ISBN: 9784910223087, 2021年
・研究目的: マーシャル諸島マジュロ環礁の景観史
- タイトル: Excavation of pit-agriculture landscape on Majuro Atoll, Marshall Islands, and its implications. GLOBAL ENVIRONMENTAL RESEARCH 9(1), 27-36, 2005年
- タイトル: Archaeological investigation of the landscape history of an Oceanic atoll: Majuro, Marshall Islands. PACIFIC SCIENCE 63(4): 537-565, 2009年
- タイトル: Rapid settlement of Majuro Atoll, central Pacific, following its emergence at 2000 years CalBP. GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS 38, 2011年
- タイトル: Sedimentary facies and Holocene depositional processes of Laura Island, Majuro Atoll. GEOMORPHOLOGY 222, 59-67, 2014年
- タイトル: ピット耕地の景観史―マーシャル諸島マジュロ環礁のジオ・アーケオロジー調査から―, 社会人類学年報33, 129-150, 2007年
・ツバル国フナフチ環礁の景観史
Atoll island vulnerability to flooding and inundation revealed by historical reconstruction: Fongafale Islet, Funafuti Atoll, Tuvalu. GLOBAL AND PLANETARY CHANGE 57(3-4), 407-416, 2007年
・石垣島の景観史
- タイトル: Patterns and Processes in the Transformation of Pacific Island Landscapes(座長), 8TH WORLD ARCHAEOLOGICAL CONGRESS, 2016年8月29日
- タイトル: Coral Reef: Strategy for Ecosystem Symbiosis and Coexistence with Humans under Multiple Stresses(分担執筆), SPRINGER JAPAN 2016年
- タイトル: リモートセンシングによる石垣島サンゴ礁形成史の地域差推定, 考古学研究 60(2), 55-72, 2013年
- タイトル: 石垣島の景観史研究(Ⅰ)ー名蔵地区の浅層ボーリング調査と低地発掘調査ー, 慶應義塾大学民族学考古学研究室, ISBN: 9784906400140, 2016年
・景観史研究の理論的考察
- タイトル: オセアニア学(分担執筆), 京都大学学術出版会, ISBN: 9784876987894, 2009年10月30日
- タイトル: 絡み合う人と自然の歴史学に向けて-その学際的広がりにもとづく理論的考察, 史学82(3), 107-126, 2013年
- タイトル: アイランドスケープ・ヒストリーズ : 島景観が架橋する歴史生態学と歴史人類学(編者), 風響社, ISBN: 9784894892583, 2019年
- タイトル: 海民の移動誌:西太平洋のネットワーク社会 (分担執筆), 昭和堂, ISBN: 9784812217184, 2018年
- タイトル: ランドスケープで考古学する(パネラー), 日本考古学協会第88回総会, 2022年5月29日
- タイトル: ようこそオセアニア世界へ(分担執筆) , 昭和堂, ISBN: 9784812222034, 2023年
- タイトル: 景観で考える : 人類学と考古学からのアプローチ(分担執筆), 臨川書店, ISBN: 9784653046332, 2023年
■モノとシマの歴史人類学
・植民地期オセアニアに生じた出会いと絡み合いの歴史人類学・博物館人類学
- タイトル: 慶應義塾大学文学部125年記念企画展『語り出す南洋の造形物:慶應大所蔵・小嶺磯吉コレクション』(監修), 2015年1月
- タイトル: ウリ像をめぐる絡み合いの歴史人類学-ビスマルク群島ニューアイルランド島の造形物に関する予察-, 史学 85(1-3), 401-439, 2015年
- タイトル: ヒトはなぜ海を越えたのか:オセアニア考古学の挑戦(分担執筆), 雄山閣, ISBN: 9784639027034, 2020年3月25日
- タイトル: 民族資料を精読する-旧オランダ領ニューギニアの犬形木製彫像-, 国立民族学博物館研究報告 46(4), 543-563, 2022年
- タイトル: 世界歴史19:太平洋海域世界(分担執筆), 岩波書店, ISBN: 9784000114298, 2023年
■地球科学
・南太平洋完新世の海面変動史
- タイトル: Revisiting late Holocene sea-level change from the Gilbert Islands, Kiribati, west-central Pacific Ocean, QUATERNARY RESEARCH 88(3), 400-408, 2017年
・環礁堆積物の化学的分析
- タイトル: Origin and migration of trace elements in the surface sediments of Majuro Atoll, Marshall Islands, CHEMOSPHERE 202, 65-75, 2018年
- タイトル: Influence of Acidification on Carbonate Sediments of Majuro Atoll, Marshall Islands CHEMISTRY LETTERS 47(4), 566-569, 2018年

研究の応用領域

・サンゴ礁学-複合ストレス下の生態系と人の共生・共存未来戦略-
・気象災害連鎖の渦中にあるオセアニア環礁社会のアイランド・レジリエンスに関する研究
・オセアニア環礁社会を支えるタロイモ栽培の天水田景観と気象災害のジオアーケオロジー
・オセアニア環礁景観の考古学的・歴史人類学的総合研究とその現在的活用策の検討
・環礁州島からなる島嶼国の持続可能な国土の維持に関する研究
・環礁上に成立する小島嶼国の地形変化と水資源変化に対する適応策に関する研究
・ジオ考古学
・文化人類学、歴史人類学
・地域研究

社会的意義

・在地の伝統的知識を活かした災害レジリエンスの強化。
・気候適応のための持続可能な農業慣行の情報提供。
・現代の災害管理戦略の改善。
・分断の世紀に他者理解の新しいあり方を提言。