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山本 詠士
准教授
山本 詠士

Yamamoto, Eiji

理工学部 システムデザイン工学科

Researchmap会員ID
B000366305
慶應義塾研究者データベース(K-RIS)
研究者詳細 - 山本 詠士

研究者紹介

分子動力学(MD)シミュレーションや連続体力学シミュレーションなどの手法を用いて,生体膜や蛋白質、コロイド、高分子などソフトマターと呼ばれる「やわらかいもの」の構造やダイナミクスを研究しています.複雑な物理システムにおける原子・分子レベルのゆらぎから生じるナノ・マイクロスケールにわたる階層的秩序構造や動的不均一現象の解明を目指しています.

研究業績紹介

■細胞膜のダイナミクスと機能
細胞の内と外を隔てる境界である細胞膜は,細胞内外への分子輸送や生体反応場としての役割を果たしており,細胞の機能維持に関わっています.細胞膜は主に脂質分子と膜タンパク質で構成され,動的かつ不均一にドメイン構造が変化する擬2次元場です.そのような場における生体分子挙動やタンパク質−タンパク質,タンパク質−脂質相互作用を研究しています.
■チャネルタンパク質における分子透過メカニズム
イオンチャネルや水チャネルといった膜貫通タンパク質は,水分子,イオン,小分子の細胞膜を介した透過を担っています.それらチャネルタンパク質の構造変化動態および分子透過メカニズムを原子レベルで解析しています.
■タンパク質の構造変化
溶液中でのタンパク質の構造ゆらぎについて研究しています.
■生体分子相互作用,創薬
タンパク質と低分子,ペプチドとの結合に関する研究をしています.創薬やバイオセンサーの開発に繋がります.
■細胞内の液-液相分離現象と生体分子凝縮体
細胞内では細胞膜のような膜を有さない構造体(非膜性構造体)が形成されます.タンパク質/RNA/水の混合溶液はある条件のとき,液−液相分離を起こします.この現象はポリマーなどの高分子溶液にも共通する現象です.構造体が形成されるメカニズムや構造体内部の構造,分子挙動について研究しています.
■特異な水分子
水は地球上の7割,人間の体もほとんどが水でできており,生命と水は密接に関わっています.H2Oという単純な構造をしている水分子ですが,非常に特異な物性を示すことでも知られています.水溶液の示す特異な性質やメカニズムについて研究しています.
■マルチスケールシミュレーション手法の開発
原子1つ1つを扱う全原子モデルによるMDシミュレーションでは,扱える系のサイズと時間スケールに限界がありますが(~10 nm,数100 nsオーダー),精度良く原子レベルの現象を解析することができます.一方,いくつかの原子を1つの粗視化粒子として扱う粗視化モデルを用いたMD計算では,精度は落ちますが,系のサイズと時間スケールの問題を克服できます(数10 nm,数10 μsオーダー).観たい現象に応じた手法を組み合わせたマルチスケールシミュレーションを行っています.機械学習などの手法も取り入れています.
さらに,メゾスケールの動的かつ不均一な場における分子の拡散現象や反応過程を明らかにするためのメゾスケールシミュレーション手法の開発を行っています.
■熱輸送
溶液中の熱輸送現象を研究しています.
■分離膜
カーボンナノチューブやグラフェン膜,外場(電場など)を用いた際に,分子を選択的に透過させる分離膜について研究してます.

研究の応用領域

・細胞膜を介した水・イオン・小分子の輸送機構の理解
・液-液相分離や生体分子凝縮体の形成メカニズムの解明
・異常水の物性や界面挙動に関する分子レベルの研究
・マルチスケールおよびメゾスケールシミュレーション手法の開発と応用
・ソフトマター材料や生体模倣材料の設計・開発
・電場やナノ構造体を用いた分離膜による分子選択性の制御

社会的意義

・水の選択的透過や分離技術の革新により、安全で持続可能な水資源確保への貢献が期待されます。
・膜タンパク質の理解は、新規薬剤設計や創薬ターゲットの特異性向上に寄与します。
・液-液相分離や構造揺らぎの研究は、病態の物理的理解を通じて、診断技術や治療戦略の革新につながります。
・シミュレーション技術の高度化は、高効率材料の開発や医療応用など、産業界への波及効果が大きいです。
・ソフトマターや生体模倣材料の研究は、環境調和型材料や次世代医療デバイスの創出に貢献します。
  • 非膜性構造体内部における分子挙動の階層統合的理解

    山本 詠士 理工学部システムデザイン工学科 専任講師

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